本日のテーマは「新たな税務調査プロセスにおける留意点」です。
2026年7月1日に施行された2025年税務管理法を受け、税務調査とリスク管理を定める、政令252/2026/NĐ-CP、通達89/2026/TT-BTCおよび通達94/2026/TT-BTCが公布されました。これを踏まえ、税務局長は2026年8月14日に決定1161/QD-CTを公布・施行し、従来の決定970/QD-TCTに代わる税務調査プロセスを定めました。新プロセスは、原則として同日以降に調査決定が発行される案件に適用されます。
1.納税者の税務リスクレベル
税務管理法第22条第1項では、税務調査の原則として「税務調査では、リスク管理および情報技術を活用し、電子データに基づくオンライン調査および遠隔調査を優先する」と定めている。
- リスク管理とは、各税務管理業務ごとに、評価指標を用いて納税者の税務リスクレベルを「高・中・低」に分類し、そのリスクレベルに応じた適切な管理措置を適用することである(通達94-13条)。
- 各税務管理業務(通達94-8条)
- 法令遵守
- 税務登録
- 税務当局内での税務調査
- 納税者所在地での税務調査
- 税金滞納、税務強制執行
- 免税・減税
- インボイスおよび証憑
- 各税務管理業務(通達94-8条)
- 評価指標
- 税法遵守度の評価指標(28項目)
- 税務リスクの評価指標(191項目)
2.税務調査プロセス(改正後)
1)税務当局内での調査
税務リスクレベルが「高」に分類された納税者が対象となる(通達94-15条)。
- ステップ1:第1回通知
疑義が残る場合、納税者に説明・追加資料の提出を求める。
- ステップ2:回答内容に応じた処理
- ケース1(申告内容が適正):調査を終了する。
- ケース2(違反内容を特定):正式な税務当局内調査へ移行
- ケース3(説明不十分の場合):第2回通知を発行し、説明・追加資料の提出を要求
- 3.1(申告内容が適正):終了
- 3.2(違反内容を特定):正式な税務当局内調査へ移行
- 3.3(税額の更正に十分な根拠あり):更正通知の発行
- 3.4(税額の更正に十分な根拠なし):納税者所在地での実地調査へ移行
通知への回答期限:発行日から10営業日以内
説明方法:税務当局での対面、オンライン、電子申請、郵送
2)納税者所在地での調査
- ステップ1:対象選定
- 年間計画による調査(通達94-17条)
- 納税者の税務リスクレベルに基づく選定:90%以上(高リスク納税者から順に選定)
- ランダム選定:10%以下
- 計画策定を要しない臨時調査
- a)不服申立て・告発、b)権限を有する機関・個人からの要請、c)組織再編・解散・破産・撤退・移転、d)税法違反の兆候、e)免税・減税、f)税金の還付前、g)税務当局内調査後の移行
- 年間計画による調査(通達94-17条)
- ステップ2:調査決定書の通知
原則として、発行日から3営業日以内に送付され、発行日から10日以内に調査開始される。開始日に調査団長が調査決定を公表し、その内容を説明する。
- ステップ3:実地調査
- 調査期間:(調査開始時日から起算)
- 通常:20日以内。1回に限り20日以内の延長が可能
- 関連者間取引を行う企業:40日以内。1回に限り40日間の延長が可能
- 資料提出期限:勤務時間ベースで6時間以内
- 調査期間:(調査開始時日から起算)
- ステップ4:調査議事録の作成・署名
- 提示日:実地調査終了日に、調査議事録案が納税者に提示される。
- 署名期限:納税者から説明を踏まえた最終版に、提示日から「5営業日以内」に署名する。
- 最終版の内容に異議がある場合:追加説明の方法・期限を議事録に記載し、期限内に署名したうで、説明を継続できる。
- 期限内に署名しない場合:行政処分の対象となる。
- ステップ5:更正通知の発行
- 追徴課税また行政処罰が必要な場合は「更正通知」を発行する。
いずれも不要な場合は「調査結論書」を発行する。
- 署名期限
・原則:議事録署名日から7営業日以内
・追加説明を行った場合:議事録署名日から1か月以内
3.おわりに
新たな税務調査プロセスでは、旧法令と比較して、調査の基本的な流れには大きな変更はない。しかし、納税者は次の点に留意する必要がある。
- 税務リスクレベルへの対応:税法遵守度の評価指標(28項目)と税務リスクの評価指標(191項目)を確認し、自社に該当するリスク要因を把握して対応する必要がある。リスクレベルが高いと評価されれば、税務調査の対象に選定される可能性が高まる。
- 電子データの整合性:オンライン・遠隔調査の優先されることなり、以下の情報の相互照会により、税務上の問題が発見されるケースが増えると推察される。これらのデータの整合性を確認し、差異がある場合はその理由を分析しておくことが重要である。
- 確定申告書、電子インボイス、会計記録、財務諸表、税債務情報および第三者情報