ローカル企業でよく見られる高級車を利用した脱税行為をご紹介いたします。
1.市場価格での取引の必要性
ベトナムでは、多くの税目において、納付すべき税額を納税者自身が行う申告により確定することを原則とし(申告納付制度)、税務管理法第9条により、税務局が税務調査を行い納税額を確定する権限を有するとしてます。税務局による課税は、通常、直接的な資料に基づき所得の実額に課税しますが、以下に掲げる状況により、それが不可能な場合には客観的な資料を用いて所得を推定して固定額を課税します。なお、その税額の確定においては税務局独自のデータベース等を参照するとしています(税務管理法-37条1項&2項)。
- 税務登録を怠る場合
- 税務申告を怠る場合
- 納税額を確定する会計帳簿が実態を反映していない場合(いわゆる、2重帳簿のケース)
- 納税額を確定する会計帳簿・インボイス・証憑書類等が整備されていない場合
- 市場価格に基づいて取引が行われていない場合
- 税額を減少させる目的で意図的な財産隠しの兆候が見られる場合
2.高級車を利用した脱税行為
会社での高級車(例:メルセデスベンツ、レクサス)の購入において、その市場価格は100であるものの、販売店との共謀により150で購入します。会社は150の取得価格で固定資産を認識し、複数年(例:5年)にわたり減価償却費を通じて損金処理します。差額の50は販売店から個人口座にキックバックされ、会社の帳簿外現金(裏金)として使用されます。結果として、損金処理された裏金を生み出すことができます。
3.おわりに
上記の脱税行為が発覚した場合は、市場価格(もしくは税務局による根拠性を欠く推定価格)での取引に調整され、過大な減価償却費は損金として認められません。さらに、当該取引は脱税行為とみなされ、罰金として追徴税額の最大3倍が科せられ、さらに延滞金の納付義務を負います。ベトナム人の会計主任はローカル企業で見られる脱税行為を日本人経営者に(善意で)提案することがありますので、そのリスクを十分にご留意ください。