本日のテーマは「日系小売業の多店舗展開が容易に~ENT不要を国内規定で明確化~」です。本件に関して、ベトナム政府は2026年9月3日、政令342/2026/ND-CPを公布しています。本政令は2026年10月18日に施行され、政令09/2018/ND-CPに代わります。
1.小売業の小売店舗設立許可証(改正後)
小売店舗を有して小売活動を行う外国投資企業(投資法上の外国投資企業に該当する場合)は、設立ライセンス(ERC/IRC)に加え、以下の事業ライセンスを取得する必要がある(政令342-5条5項)。
- 営業許可証
- 小売店舗設立許可証
小売店舗設立許可証の取得に対しては、以下の3条件をすべて満たす必要がある(政令342-21条)。
- 税務コンプライアンス
申請時点で設立後1年以上の企業である場合、期限経過後の未納税額がないこと
- 設置予定地の法令適合性
小売店舗の設置予定地が、関連する地理的市場区域において小売店舗を設立するために必要な、土地管理、都市計画、投資、建設、防火・消防、交通安全および環境衛生に関する法令上の条件を満たすこと
- 経済的必要性テスト(ENT)の要件充足
ENTが必要な場合(*1)、ENTの評価基準(*2)を満たすこと
(*1) ENTが必要な場合
ENTは、ベトナムが締約国であり、ENTの廃止に関する約束を含む国際条約に参加していない国の外国投資家が、第2号以降の小売店舗を設立する場合に実施される。
ただし、当該店舗が以下のすべてを満たす場合、ENTは不要である。
- 面積が500㎡未満であること
- ショッピングセンター内に設立されること
- コンビニエンスストア、ミニスーパーマーケットまたはスーパーマーケットに該当しないこと
(*2) ENTの評価基準
以下の事項を踏まえ、小売店舗の必要性が評価される。
- 出店予定地の周辺市場の安定性、および既存小売店舗・伝統市場への影響
- 出店予定地の周辺地域における需要と、新設店舗による対応能力
- 出店予定地の周辺地域の社会経済発展への貢献
- 治安、社会安全および安全保障上の要件への適合性
2. 主な改正点
<規制緩和>
- ENT免除の大幅拡大
改正前はすべての外資投資家にENTの実施が求められたが、改正後は、ENT廃止を約束する国際条約の適用を受ける国の外国投資家について、ENTは不要となる。
- 財務計画の提出不要
改正前は小売店設立のための財務計画の提出が求められたが、改正後は不要となる。
- ライセンス手続きの簡素化
改正前は商工省の承認が求められたが、改正後は不要となり、省級人民委員会に権限が集約される。ENTおよび国家安全保障審査が不要な場合、小売店舗設立許可証は、有効な申請書類の受領日から14営業日で発給される。
<規制強化>
- 設置予定地の関連法令への適合
改正前は、設置予定地の「関連計画への適合」という抽象的な要件が、改正後は、土地、計画、投資、建設、防火・消防、交通安全及び環境衛生に関する法令要件として具体化された。
- 小規模小売店舗に対するENT免除の縮小
改正前のコンビニエンスストアおよびミニスーパーマーケットに加え、改正後はスーパーマーケットもENT免除の対象外とされた。
3.おわりに
日本の投資家については、ENT撤廃を約束するCPTPPにより、2024年1月14日から、第2号以降の小売店舗を設立する場合でも、原則としてENTは不要となっている。政令342によりこの取扱いが国内法令上も明確化された。
これまで、イオンモールなどのショッピングセンター外に小売店舗を設立する場合、ENTが大きな障壁となっていた。これは、WTO加盟後もローカル小売業者を保護する制度として機能してきたが、残念ながら魅力的なローカル資本の小売店舗の発展にはつながらなかった。
今後は、いよいよ外資投資家による小売店舗の展開が加速することが期待される。