本日のテーマは「AEO制度の15年と今後の展開」です。以下に基づきご説明いたします。
参照法令
- 2014年税関法(法律90/2025/QH15による一部改正を含む)、2016年輸出入関税法
- 2025年ハイテク法(法律133/2025/QH15):税関法を一部改正。2026年7月1日施行。
- 政令08/2015/ND-CP、政令167/2025/ND-CP(政令08を一部改正)
- 通達121/2025/TT-BTC:2026年2月1日より施行。通達72/2015/を廃止。
参考記事(財務省機関紙)
- 2026年9月29日付け記事:税関優先企業(AEO)7社の認定・更新
- 2026年9月30日付け記事:ベトナムAEO制度:輸出入の円滑化
1.AEO(認定事業者)制度
AEO制度とは、「世界税関機構(WCO)」が提唱する枠組みに基づき、税関が企業の内部統制や法令遵守体制を評価・認証し、通関などの優遇を与える制度である。ベトナムでは2011年に試験導入され、2014年税関法で法的枠組みが整備された。
主なメリット
- 書類検査・現物検査の原則免除
通関時の税関申告書類の検査および貨物の現物検査が原則として免除される(税関法‐43条1項)
- 簡易申告による通関
未完成の申告書で通関できる。ただし、30日以内に完全な申告書を提出する(税関法-43条2項)
- 事後申告による納品の円滑化
- AEOであるEPEと取引先との取引では、税関申告前に貨物を受け渡し、30日以内に事後申告できる(通達121-1条46項)。
- AEOと外国企業との現地輸出入について、税関申告前に貨物を受け渡し、30日以内に事後申告できる(通達121-1条53項)。
- 事後調査の優遇
- 税関当局内での調査の原則免除(政令167-1条4項)
- 企業所在地での調査の頻度制限:AEO認定日・更新日から3年間の調査は1回以下に制限される(政令167-1条7項)。
- 専門検査待ち期間中の自社倉庫での保管(政令08-9条3項)
- 関税の月次一括納付:
当月の通関・リリース分の関税を、翌月10日までに一括納付できる(輸出入関税法-9条2項)
認定要件
企業は以下の要件をすべて満たす必要がある(政令08-10条、政令167-1条5項)。
- a.輸出入金額の基準(以下のいずれかを満たすこと)
- 年間の輸出入金額が1億米ドル以上
- ベトナム国内で製造された製品の年間輸出金額が4,000万米ドル以上
- ベトナム国内で生産または栽培された農産物・水産物の年間輸出金額が3,000万米ドル以上
- b. 2年間連続での関税・税法の遵守
一定の行政違反による処分を受けていない。
- c. 会計・監査に関する規制を遵守
監査法人から無限定適正意見を受けている。
- d. 内部統制システムの構築・運用・維持
- e. 電子通関・電子税務手続きの実施
- f. 銀行を通じた支払いの実施
国家の戦略分野に属する企業への特例
以下の国家の戦略分野に属する企業は、上記cからfの要件のみを満たすことでAEO認定を受けられる(2025年ハイテク法-25条5項)。
- 所管当局より、戦略的技術企業、ハイテク企業またはハイテク製品製造企業として公表された企業
- 基幹デジタル技術製品の製造プロジェクトを実施する企業
- 半導体チップの研究開発・設計・製造・パッケージング・試験を実施する企業
- 半導体産業において直接使用される補助製品(部材等)の製造を実施する企業
- AIデータセンターの建設プロジェクトを実施する企業
2.AEO制度の15年と今後の展開
2026年9月29日、ハノイでAEO制度15周年記念式典が開催された。税関局のTrần Đức Hùng副局長は、制度の実績と今後の展開について、以下の点を強調している。
制度の実績と運用状況
- 制度の実績:2026年9月時点で74社が認定され、全国の輸出入総額の30%を占めている。うち、10社はハイテク・半導体分野に属する。
- 企業のメリット:通関・検査・税関管理などの優遇により、時間と費用を削減し、生産・物流の予見可能性を高める。
- 継続的な法令遵守:認定は無期限ではない。2025年には4社が一時停止、3社が終了となった。
今後の展開
- 税関管理の転換:個々の取引の直接検査から、企業の内部統制や法令遵守履歴などのデータに基づく企業評価・リスク管理へ移行している。
- 国際的な展開:ASEAN・韓国との相互承認協定(MRA)を通じ、相手国でも通関上の優遇を受けられる仕組みを進めている。
- 今後の重点:ハイテク・半導体・デジタル技術分野や、管理能力の高い国内企業への制度拡大を目指す。
なお、同式典では、以下の3社が新たに認定された(添付写真参照)。
- Hana Micron Vina Co., Ltd. (韓国資本、半導体のパッケージング・試験)
- Luxshare-ICT(Vietnam)Co., Ltd. (中国資本、電子部品・機器メーカー)
- Samju Vina Co., Ltd. (韓国資本、スマートフォン向け電子部品の製造)
また、Minh Phu Hau Giang JSC、Hoa Sen Group JSC、Hoya Glass Disk Vietnam Co., Ltd.、LG Electronics Vietnam Hai Phong Co., Ltd.の4社について、適用期間が延長された。
3.おわりに
法人税などの税務管理と同様に、税関行政においても、AEO制度を通じて、次の2つの方向性が明確になっている。
- 法令遵守企業への優遇による通関の円滑化
税関管理のデジタル化とリスク管理を進め、内部統制や法令遵守体制が整った企業に対し、通関上の優遇を与える。
- 国の戦略分野への重点的な支援
半導体・ハイテク・デジタル技術・AIデータセンターなどの戦略分野では、輸出入金額などの認定要件を緩和し、AEO制度の対象拡大を進める。