本件に関しては、2017年5月16日付けの弊社最新規定No.09にてお知らせしています(以下メール参照)。今回は、最近の税務調査の動きについてご紹介いたします。
1.在庫差異への課税
2015年輸出入関税法によると、非関税物品の一つとして、非関税地域で使用されるもので非関税地域に海外から輸入される物品が対象となっています。これによりEPEは輸入関税の納税義務はありません。税務調査においては、EPEは輸入関税の納税義務はないものの、実際は「在庫差異への課税」により対象となっています。この在庫差異への課税は、2015年4月1日に施行された通達38/2015/TT-BTC(以下、通達38)により、以下の通り、その課税方法が大幅に変更されています。
1)通達38以前
税関に登録した標準消費量・仕損率と、実際の消費量・仕損率が異なることから生じる「税関データ在庫量」と「実際在庫量」の差異に対する関税・VAT課税のことです。「数量」に焦点が置かれ、通関書類のみを参照して算出される差異となります。企業は四半期ごとに在庫金額を申告する義務があります。
2)通達38以降
企業が自主設定した標準消費量・仕損率と、実際の消費量・仕損率が異なることから生じる「税関データ在庫金額」と「実際在庫金額」の差異に対する課税・VAT課税のことです。「金額」に焦点が置かれ、会計帳簿を参照して算出される差異となります。企業は1年に1回実際の在庫金額を申告する必要があります。
2.税務調査のアプローチ
通達38が有効になる対象年度は2015年以降ですが、過去5年にわたり (関税の時効は5年なので) 通達38を根拠規定として税務調査が実施されているようです。企業は、年次で会計帳簿に基づく実際の在庫金額を申告し、その在庫金額と自主設定した標準消費量・仕損率を使って年度末時点の「あるべき原材料の在庫金額」を算出します。一方で、税務局側は通関数値(輸入と輸出)と税務調査時に企業から入手した自主設定の標準消費量と仕損率を使って「あるべき原材料の在庫金額」を算出します。この2つの金額に差異がある場合は、国内販売が行われたものとみなし、輸入関税とVATが課されることになります。
3.おわりに
EPEへの在庫差異による課税は最近のことではなく、既にEPEの80%程度は税務調査を受けていると言われています。まだ、税務調査を未だ受けていない企業もしくは設立してから数年が経過したEPEにおいては、専門家によるヘルスチェックを受けて、課税プロセスの仕組みを理解し、予想される追徴課税額を知ることが必要となります。その上で、税務調査に備えて通関書類の修正や自主設定の標準消費量・仕損率の設定を見直すことになります。早急にご検討されることをお勧めいたします。