従業員から急な退職届を提出されて引き継ぎが間に合わず困ったことはありませんか。2021年1月1日より施行される改正労働法では、この退職届が労働者にとって更に有利な条件となっています。
1.退職届と退職願
労働者側からの労働契約の解除を「退職」といいます。法律的には、労働者からの一方的な意思表示で解除できるのか、それとも使用者との合意が必要(合意退職)かが重要な問題で、どちらの立場をとるかで「退職の日」とはいつかなどの論点で結論が変わってきます。また、労働者からの通知も、前者の場合は「退職届」、後者の場合は「退職願」となる違いが生じます。
2.退職届の改正事項
1)現行法
労働者が退職届を提出する場合、有期労働契約では、退職理由により定められた期限までに通知をし、無期限労働契約では、理由を問わず45日前までの通知が必要となります(37条)。
2)改正法労働者が退職届を提出する場合、労働契約の種類により、退職理由を問わず定められた期限までに通知が必要となります(35条)。
3.おわりに
従来より、労使間の合意の下に理由を問わない退職届の事前通知期間を1-2ヵ月程度にすることで、使用者は(必要に応じて後任を採用し)引き続き期間を確保してきました。それ以上の事前通知期間(例:3ヵ月)では、法令に基づく一定の事由による退職届を促すことになるため一般的ではありません。2021年1月1日に施行される改正法では、退職届が労働者に有利に変更されています。一般的な1年から2年程度の有期労働契約では、理由を問わず30日前の通知により一方的な退職が可能となりました。使用者としては、安定的な事業活動を確保するために、余裕を持った従業員を常時雇用する必要があると考えます。